世の中にいろいろなコーヒーがありますが、「コピ・ルアク」ほど奇妙なコーヒーはないでしょう。
生産量が非常に少ないため、とても高価なコーヒーとしても知られています。
今回は幻のコーヒー「コピ・ルアク」の秘密を探ってみましょう。
映画にも登場
秘密の本質に迫る前に、ちょっと寄り道を。
実は「コピ・ルアク」は、いくつかの映画の中で、印象的なコーヒーとして登場しています。
映画「かもめ食堂」では、「コピ・ルアック、コピ・ルアック」と唱えながらコーヒーを淹れる場面があります。
「コピ・ルアク」は、コーヒーをおいしく淹れるおまじない。人々の心を開くアイテムとしても使われています。
映画「最高の人生の見つけ方」でも、「コピ・ルアク」は映画の主題に関わる重要なアイテム。
富豪の愛飲する最高級コーヒーがどのように作られているかを知った途端、主人公の希望の一つが叶います。
「コピ・ルアク」は、映画のキーアイテムとして取り上げられるほど、特別感のあるコーヒーなのです。
コピ・ルアクとは
本題に戻りましょう。「コピ・ルアク」とは一体何なのでしょうか。
インドネシア語で
「コピ」はコーヒー
「ルアク」はジャコウネコ
つまり「コピ・ルアク」とは、「ジャコウネコのコーヒー」という意味になります。
ジャコウネコは、一般的なネコよりもマングースやハクビシンに近い、原始的な特徴を残すネコです。
インドネシアや東チモール、フィリピン、ベトナムなどに生息しています。
インドネシアをはじめとするジャコウネコの生息地で「コピ・ルアク」は作られ、高価な土産物として売られています。
喫茶店で一杯数千円とも言われる、世界で最も高価なコーヒー「コピ・ルアク」。
その希少性は、ジャコウネコが関わるコーヒー豆の奇妙な製造法にありました。
奇妙な製造法
「コピ・ルアク」とは、なんとコーヒーの実を食べたジャコウネコのフンから取り出されるコーヒーなのです。
ジャコウネコは、赤く熟したコーヒーの実、コーヒーチェリーを食べます。コーヒーチェリー外側の柔らかい部分は消化されます。
一方、コーヒーの実の内部、パーチメントと呼ばれる固い殻で覆われたコーヒーのタネは消化されずに排泄されます。
ジャコウネコのフンから、未消化のコーヒーのタネを取り出して洗浄します。
さらに、タネの固い殻からコーヒービーン(いわゆるコーヒー豆)を取り出します。
こうして、ジャコウネコのフンから取り出されたコーヒー豆が「コピ・ルアク」となります。
野生のジャコウネコ1匹が1日で「製造」する「コピ・ルアク」は数グラム。
この希少性が、世界一高価なコーヒーとされる理由です。
フンからわざわざコーヒーを取り出した背景には、植民地時代の悲しい歴史があります。
インドネシアがオランダの植民地だった頃、農民自身は、苦労して作るコーヒーを口にすることができませんでした。
そこで、ジャコウネコのフンに残っていたコーヒーを取り出して飲んでみたら、意外なおいしさを発見したのが始まり、と伝えられています。
その味わいは
幻のコーヒー「コピ ・ルアク」は、どんな味なのでしょうか。
残念ながら私はまだ味わったことがありません。
そこで、「コピ・ルアク」を飲んだことがある人のコメントを集めてみました。
- えも言われぬ独特の香り
- スッキリした味
- 忘れられない華やかな後味
- 野生的な香り
- 他のコーヒーと変わらない
- 特徴はない
いろいろな感想があり、ますます謎めいてきました。
味の理由
「コピ・ルアク」の独特な味の理由ついては、次のような通説があります。
- 野生のジャコウネコは、完熟したコーヒー豆だけを選んで食べるから
- ジャコウネコの消化器官を通るときに、特殊な発酵プロセスを経るから
一方、アメリカ・スペシャルティコーヒー協会(SCAA)は、「コピ・ルアク」の味について「よくない」と評価したことがあります。
「コピ ・ルアク」は「特別な」コーヒーですが、必ずしも高品質なスペシャルティ・コーヒーとしての基準を満たしているわけではないからです。
たとえば野生のジャコウネコが食べるコーヒー豆は、基本的にロブスタ種です。ロブスタ種とは、缶コーヒーやインスタントコーヒーなどのために大量加工されるコーヒー。スペシャルティ・コーヒーに使われるアラビカ種とは別の種類です。
ジャコウネコが食べるコーヒーの実がロブスタ種ならば、コーヒー自体が持っている味のポテンシャルはさほど高くありません。
ところが「コピ・ルアク」が高値で売れることから、ジャコウネコを飼育し、「コピ・ルアク」を大量製造するところも出てきました。
この「養殖コピ・ルアク」の場合は、ジャコウネコにどんなエサを与えるかによって、フン、いやコーヒーの品質に差が出てきます。
実際、飼育ジャコウネコに高品質のアラビカ種のコーヒーの実を与えているところもあるようです。
さらに、「コピ・ルアク」として販売しているコーヒーの中には、ほん数パーセントの「コピ・ルアク」しか含まれていないものもあります。
また高値で売れるだけあって、ニセモノも横行しているようです。
以上のような理由から、「コピ・ルアク」を味わったという人の感想も、さまざまになっているのではないでしょうか。
ストーリーが創り出すコーヒーの味
一杯のコーヒーの味や香りは、複雑な要素によって決まります。
「ジャコウネコが食べて出す」のが「コピ・ルアク」と呼べるならば、エサにするコーヒーの実の種類や質によって、最終的なコーヒーの味は違ってきます。
一方で、「コピ・ルアク」の驚きの製造方法や、ジャコウネコが美味しい完熟コーヒーの実を選んでくれるということが、私たちの想像力や期待を刺激します。
コーヒーの味や香りは、複雑な化学反応の結果です。
同時に、人が感じる味や香りとは、コーヒーが持っているストーリーからもたらされるものがあるはずです。
「コピ・ルアク」とは、そうしたストーリーも一緒に味わうコーヒーだと思うのです。
一度は体験したい「コピ・ルアク」
「コピ・ルアク」、コーヒー好きなら一度は体験してみたいコーヒーです。
飲めばきっと自慢できる「コピ・ルアク」。
幻のコーヒーが手に入ったら、そのストーリーとともに味わってみてください。
この記事の著者紹介
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さっくー
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こんにちは!
さっくーと申します。松阪牛で有名な三重県松阪市の出身です。
両親の影響で小学校1年生の頃から毎日3杯のコーヒー(しかもブラック)を飲む生活を送るほどの大のコーヒー好き。
コーヒー好きが功を奏しPASSIONEプロジェクトへ参加。
ようやくサッカー以上に熱くなれるものが見つかった。。。