コンビニといえば、ちょっとした食料品や日用品を買うところ。そんな少し前の常識を越えて、現在のコンビニの役割は多岐に広がっています。
コンビニ店内で淹れるコーヒーもその一つ。改めて説明の必要がないほど、コンビニ・コーヒーは身近なものになってきました。
「セブンカフェ」は、店内で挽きたて・淹れたてを提供する、セブン-イレブンコーヒーのブランドです。今回は、快進撃を続ける「セブンカフェ」のコーヒーに注目してみましょう。
セブンカフェの今
セブン-イレブンの入り口付近に置かれている、背の高い黒のマシン。店内で豆から挽いてドリップする「セブンカフェ」のコーヒーマシンです。このマシンで作られるのは、コーヒーとカフェラテ。それぞれホットかアイス、サイズはレギュラーかラージが選択できます。(2019年11月現在)
特に通勤時間帯やランチタイムには、テイクアウトやイートインで休憩するために、淹れたてのコーヒーとサンドイッチを買う人を多く見かけます。
度重なるコーヒー改良の長い歴史
いまや幅広く受け入れられているセブンイレブンのコーヒー。
現在の「セブンカフェ」に至るまでに、改良を重ねた長い歴史があるのをご存知ですか。
サイフォン時代
実は1980年代から、セブン-イレブンは店内コーヒーの販売をすでに始めていました。当時はサイフォンでコーヒーを作り、注文ごとにポットからカップに注いでいたのです。コーヒーの風味を損なわないために、1時間ごとに作り替えるルールを設定していました。
しかし多忙な現場ではマニュアル通りの対応が難しく、最初の改良が行われることとなります。
ドリップコーヒーマシン時代
1988年にサイフォンをやめて、注文ごとに一杯ずつドリップするコーヒーマシンを導入します。これなら一杯ずつ新鮮なコーヒーが楽しめる上に、残ったコーヒーを廃棄する必要もありません。
ところがここでも新たな問題が発生しました。コーヒーサーバーをヒーター上に長時間置いたままにすることで、煮詰まった匂いが店内に流れてしまったのです。
カートリッジコーヒーマシン時代
異臭問題を解決するために、1990年代にはコーヒーマシンを変更します。カートリッジ方式の採用です。
しかし残念ながら、当時のカートリッジ方式コーヒーには、他の方式と比べてコーヒーの風味が落ちてしまうという問題がありました。
バリスターズカフェ時代
セブン-イレブンは試行錯誤しながら、コーヒーの味を落とさずに、管理はしやすく異臭問題も解決できる方法を探ります。それは、スターバックスが店舗を増やしていく時期と重なっていました。
エスプレッソベースのコーヒー人気も背景に、セブン-イレブンは2002年「バリスターズカフェ」を始めます。セルフ方式のエスプレッソの提供です。
「バリスターズカフェ」は、若年層を中心に人気を得ました。しかしエスプレッソは万人向けとはならず、コーヒーの売り上げは低迷してしまいました。
セブンカフェのはじまり
2011年、これまでの経験をもとに「おいしく飲みやすい本格コーヒー」の開発が新たに始まります。2012年からの1,799店における大規模な試行販売を経て、2013年1月にはいよいよ「セブンカフェ」の登場です。
「セブンカフェ」で採用したのは、多くの日本人が好むペーパードリップ方式。一杯ずつペーパードリップで抽出することで、淹れたてのおいしさを目指しました。
「セブンカフェ」の登場は、マクドナルドが100円コーヒーで話題になったのとちょうど同じ頃。低価格でおいしいコーヒーを提供することは集客に繋がる、と証明することとなりました。
この後もコーヒーの改良は続きます。
2014年にはすっきり飲めるように豆の磨き方を変更しました。
2015年6月にはアイスカフェラテが新登場。「挽きたての香りとコク」と「濃厚なミルクの風味」を両立させるアイスミルクビーズを開発、氷や容器にも工夫が施されました。
セブンカフェ新時代へ
2018年3月、セブン-イレブンは「日本のコーヒーが変わります。」のキャッチコピーで、さらなる大幅リニューアルに取り組みます。
「大人の深みとこだわり」をコンセプトに、コーヒー豆の量を1割増量。焙煎方法も2種から3種に変更、より深煎りにしました。さらに蒸らし時間を長くして抽出方法も変更、専門店の淹れ方を再現しました。
2018年10月には、利便性の向上のための自動化や時間短縮が測られます。
容器で種類を自動判別できるようにマシンを改良。抽出時間を45秒から39秒へと短縮するために、ブラックコーヒー専用の新型機も開発します。
こうしてアレンジに向くエスプレッソベースのコーヒーを扱うコンビニが多い中、セブンはコーヒーそのものの味を高める方向で差別化に挑戦したのです。
2018年11月1日には、ホットとアイスのカフェラテをリニューアル。より滑らかな口当たりとクリーミーな味わいを目指します。それは、女性客数や、午後の時間帯での販売数が伸びる結果に結びついていきます。
実際に味わってみると
改良を重ねてきたセブン-イレブンのコーヒー。今その味を確かめてみましょう。
まずマシンにセットされている焙煎豆を観察すると、オイルが染み出した黒に近い色。フレンチローストレベルのかなりの深煎りのようです。
購入すると豆が挽かれて、抽出が始まります。
抽出時間は39秒。ハンドドリップする場合は抽出に2分半ほどかけるので、かなりの短時間抽出と言えます。豆の量を以前より増量し、多めの粉を使って短時間抽出を行なっているようです。
コーヒーの味はとてもマイルド。酸味も苦味も控えめの、すっきりとした味わいです。コーヒーだけをゴクゴク飲んでも疲れない、ライトな味わい。食べ物の味を邪魔しないので、どんな食事とも合わせやすいと言えます。
個性的なコーヒーではないけれども、やさしいコーヒー。
この味で100円なら、誰もがお得と感じられるのではないでしょうか。
セブンカフェの効果
2019年2月末、セブンカフェのコーヒー販売は、累計で50億杯を突破しました。ちょっと想像できないほど大量のコーヒーが、コンビニから提供されてきたことになります。
セブンカフェの攻めの姿勢は、他のコンビニ・コーヒーにも大きな影響を与えてきました。ローソン「マチカフェ」やファミリーマート「ファミマカフェ」などにおいても、価格を上げずに味を改良する取り組みが広がりました。コンビニ・コーヒーの広がりもあって、日本のコーヒー消費量は毎年過去最高を更新しています。
コンビニ・コーヒーの広がりによって、どこにいても手軽においしいコーヒーが飲める機会が増えたのはうれしいものです。一方で昔ながらの喫茶店数はかつての半減となり、コーヒー好きにとっては残念に思います。個性的なコーヒー豆を選んでゆっくり味わうのは自分の部屋で、という傾向も高まっているのかもしれません。
まだまだ変わる?これからのセブンカフェ
「コスパとおいしさの絶妙なバランス」
これが、セブン-イレブンのコーヒーの最大の魅力と言えます。
ところで、一度おいしいコーヒーの味を知った顧客は、品質の低下には敏感に気づきます。顧客を飽きさせずリピーターになってもらうには、コーヒーの品質を落とさないまま、目新しさや驚きは提供し続けていく必要があるでしょう。
日本のコーヒー市場を広げ、コーヒー習慣を変えたとも言えるセブン-イレブンのコーヒー。まだまだ続くであろうコーヒー改良の取り組みに、これからも目が離せません。